ケース研究 ユニクロ

論文 「ユニクロ」:SPAと中国調達
執筆者:杉田俊明
注:本論文は、2003年5月、有斐閣社より刊行された『ケース・スタディ 国際経営』(吉原英樹・他編)に
収録されているので、一般読者の方は本書を参照されたい。
最新の関連論著については本欄下部に掲載されているリストを参照されたい。

要旨

 店名を「ユニクロ」として全国的に展開しているカジュアル衣料企業、株式会社ファーストリテイリング(以下、ユニクロと略称する)は「フリース」という代表的な衣料を爆発的にヒットさせた点で知名度は高い。だが、ユニクロの意義はフリースのヒットよりも、その革新的な経営モデルにある。2001年までの急成長の後、陰りが見え始め、2002年8月期においては前年比減収減益という状況にはあるが、繊維業界のみならず、日本企業全体にいままでに大きなインパクトを与え、経営の革新やビジネスモデルの構築など、多くのヒントを与えてきたのは否定できない事実である。

 ユニクロの経営モデルについて、筆者は以下の点において注目し、研究を進めてきた。例えば、経営者のリーダーシップと企業全体のベンチャー精神、デフレ環境下におけるマーケティング手法の応用、革新的な人事システムの構築とその応用などがある。本文では、「ユニクロ」型のSPAビジネスモデルを主にとり上げ、とりわけその調達モデルに焦点を絞り、全国に広がる販売店と中国を中心とする海外の生産現場をシステム的に結ぶグローバルSCMシステムの構築とその応用という点に焦点を絞っている。ユニクロの急成長を支えてきたのがこのシステムであり、そして、流行による需要低減の時に柔軟に対応できるのもこのシステムである。

 昨今、「世界の工場」としてもてはやされている中国でモノづくりをするのは、もはや珍しいものではない。だが、この当たり前のことをうまくマネジメントとオペレーションすることは実はそう簡単なことではない。80年代初頭から、日本企業の中でもっとも早い段階から対中国貿易の拡大に取り組み、中国に多くの投資をしてきたのが繊維産業、とりわけアパレルである。だが、商社による対中アパレルビジネスも含め、量的な拡大はあったが、質的な成果は必ずしも満足できるものではなかった。本文は中国の協力工場を日本の消費者に直結させ、成功したユニクロの国際調達を中心に展開し、その調達手法を明らかにすることにより、昨今高まっている中国調達の命題も含め、国際経営におけるグローバル・ソーシングという普遍的な意義をも間接的に探求するものである。

 経営者やビジネスマンにとっては、従来の固定観念からユニクロの「破壊的な」展開を被害者として嘆くよりも、また、自らの経営努力を棚上げし他人他社の一時の不調を肴にするよりも、ユニクロはなぜ急成長を達成できたのか、なぜトラブルが多いと言われる中国調達に成功できたのか、なぜ海外工場をほとんど持たずにして海外調達に成功できたのか、など、理由を探求し、自社との格差を認識し、その長所を謙虚に学ぶことが必要ではないか、と筆者が思うのである。

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「ユニクロ現象」討論会や関連写真は こちらのリンク へ

利豊との比較研究
Network Orchestration ユニクロと Li & Fung(利豊)との比較研究
(2010年7月22日版)

ユニクロの中国・アジアビジネス戦略と実務
ユニクロ 久保田勝美氏が杉田俊明担当の研究会における講演の講演録
(甲南大学ビジネスイノベーション研究所主催、2009年10月30日。抜粋・文責:杉田)
ページNo.4掲載の写真の左側が久保田氏 (pw-0)

ユニクロ なぜ独り勝ちなのか(08年8月版)
ビジネススクール用スライド資料
(杉田俊明)

その他、本テーマに関わるユニクロ、東レ、カイハラなどの資料については今後順次掲載予定。
競争戦略とGSC(211101) (pw-e3)


杉田俊明研究室
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