ケース研究
ストライキ騒ぎに巻き込まれたホンダの中国現地法人
ー 何が起こったのか、何が問題なのか ー
執筆者:杉田俊明
2010年5月中旬から6月上旬にかけて、衝撃的なニュースが日本企業を襲った。特に、国際事業を展開している企業、中国において事業を展開している企業にとってその衝撃は多大なものであった。 中国ビジネスにおいて快進撃を続けていたホンダの中国現地法人が現地においてストライキ騒ぎに巻き込まれていたのである。現地においてホンダが単独出資で設立した部品製造会社の一つにストライキが発生し、約2週間も続いていた。その結果、それらの部品の供給を受けていた同ホンダグループの、中国との合弁の完成車組み立て会社3社4工場の生産にも影響が出て、全ラインの生産中止を余儀なくされていた。 当該部品製造会社での争議がようやく終結に向かい始めた頃、今度はホンダのグループ会社が設立した他の部品製造現地法人二社において相次ぎストライキが発生した。それらの部品の生産が停止したため、完成車会社の2工場での生産が再び影響を受け、混乱に巻き込まれていたのである。 日本の代表的なグローバル企業の一つであるホンダが、中国において好業績を挙げ続けてきた企業でもあり、中国側からもいままでに高く評価されてきた企業でもある。そのホンダの中国現地法人において何が起こったのか?また、何が問題だったのか?本稿は、最新の情報を含め中国側の報道を広く、丹念に収集し、文献サーベイを通じ、整理・分析することにより、いくつかの側面からそれらの事実関係を克明に浮き彫りにするものである。そして、これらのミクロの視点における事実関係の解明により、経営戦略、また、経営実務的な視点において、ホンダのみならず、在外日系企業を含む日本企業全体にとっての示唆を提供するものでもある。 |