論文:繊維大国・中国とどう向き合うべきか

執筆者:杉田俊明(甲南大学


要旨

 中国は世界最大の繊維生産国であり、最大の繊維輸出国でもある。日本のかつての花形産業である繊維産業は、いまは中国との競争に敗れ、産業における多くの部分を中国にシフトせざるを得ない状況になっている。日本市場における繊維製品もいまや圧倒的なシェアにおいて中国製という事態になっている。「日本の繊維産業は壊滅だ」と言ったような過激な意見もよく聞かれる。

他方、早くから斜陽産業と呼ばれ、中国との厳しい競争に晒されてきた繊維産業はまた、もっとも早く中国に進出(対中直接投資)し、中国企業と競争しながらも、協調や共存の道筋を模索してきた産業でもある。対中進出約20年を経過したいま、日本の産業において、苦戦しているのが繊維産業ではあるが、世界最大の生産国であり輸出国でもある中国により、また、世界最大の消費市場にもなりつつある中国にて、恩恵を受けているのも繊維産業、という側面もまた事実である。

本稿は、繊維産業の一部の企業は中国企業と競争しながらも、中国の経営資源を活用し、中国との共存を巧みに図っている姿を浮き彫りにし、日本の繊維企業にとって競争優位とは何か、ビジネス・チャンスとは何か、を検討するものである。そして、これらの事例は、日本の繊維産業のいわゆる「盛衰」の後に、おおよそ同様な道のりを辿ろうとする日本の家電や電機産業など、他産業にとっても示唆をもたらすものである。

各節の構成として、第1節は対中ビジネスの概況とグローバル競争の進展をレビューし、第2節は中国の代表的な企業形態である国有企業と、外資対中進出の代表的な形態である合弁企業や独資企業の間における相互競争を分析し、それぞれがどのようにして競争優位を生かしているのかを解明する。第3節は実際の日系企業のケース・スタディを通じて対中ビジネスの対応パターンを解析し、対中ビジネスの三つのビジネス・モデルを検討する。第4節は、ケース・スタディにおいて取り上げた企業の事例を中心に、中国企業との競争と共存のあり方について検討し、日本企業への示唆を考えたい。


本論文は日本紡績協会『日本紡績月報』2003年3・4月号に掲載されたものである。
詳細は当該雑誌をご参照ください。

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杉田俊明研究室(甲南大学経営学部)
更新 2003/02/24
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