21世紀のビジネスリーダー:MBA


このコーナーでは中国のMBA最新事情を紹介する。
最新の中国MBA校のランキングや、
中国のMBAスクールでの担当講義状況については
近いうちにこのコーナーにて掲載される予定です。
(杉田俊明は2003年9月より半年間、中国のMBAスクールにて関連業務を担当する予定)

2002 中国MBA最新情報
中国正式のEMBA課程が2002年9月より始動
2002年9月より、清華大学、北京大学、中国人民大学、復旦大学など30の重点大学にて企業の上級管理職対象のEMBA(Executive Master of Business Administration)課程をスターする。これは中国において初めてこのような課程について国務院(内閣)学術委員会により正式認可が下されたものである。
清華大学の場合、第1期EMBAの2年間の学費は25万元(元=16円の場合、約400万円)である。
まずは2クラスで97名を募集(9月13日開講)、12月までにさらに2クラスを募集する予定である。
マイケル・ポーターやフィリップ・コトラーなど、世界的に著名な経営学大家も清華大学EMBAの特任教授を勤める予定である。
清華大学EMBA課程は計19科目と卒論(修士論文・研究論文)があり、月4日の集中講義によって進められる。修了後、教育部(中国文部省)が発行する清華大学EMBA学位(修士号)を取得できる。

清華大学の通常のMBA課程について
2002年の募集人数:
400名(うち、国際ビジネス専攻120名)
応募資格:
学士号保持者については3年、または3年以上の職歴を有するもの
修士号保持者については2年、または2年以上の職歴を有するもの
以上、全日制学生。
勤務を持続しながら就学する学生(企業派遣)の場合、学士号保持者については5年以上の職歴を有するものが条件である。この場合の就学所要年数は3から5年で、募集数は200名である。

注:中国の大学は「秋に申込、春に試験、秋に入学」というのが一般的である。
清華大学MBA課程の場合も、2002年度入学者の場合、2001年10月、11月に申込、2002年2月試験、2002年9月に入学という状況である。
学費についてはMBAはEMBAよりは安価だが上昇傾向にある。また、修学方式、課程コースなどによってかなり異なり、複雑である。
各詳細は清華大学のホームページを参照されたい。
なお、清華大学は中国では理工系のトップ校だが、現在では経営やMBAの分野においてもトップである。

復旦大学MBAについて
○EMBAコース
募集人数:年300人以内
応募資格:8年以上の勤務経験と4年以上の管理職経験
選考方式:書類資格審査と面接
修学方式:月4日制。計20月

○MBAコース
修学方式:
週2日制コース(社会人向け2年半修学コース)
全日制コース(2年修学コース)

アモイ大学EMBAについて
学費:18万元

全体の概況について
中国のMBA教育は1991年からスタートしたものである。
当時の開講大学は9校、学生数100人余りという状況であった。2002年では全国27省・市で合計65校がMBAコースを設けている。1997年の応募数は2万3千人だったが、2002年では、予定定員8千人に対して、応募数は5万人に達していた。

入学の資格について
日本の大学を卒業後に中国の大学院(研究生院)に進むことはできるが、社会人経験が求まられるMBAやEMBAコースに進むことはできない。

中国での勤務について
中国の大学や大学院を卒業した後に中国企業に勤務することはできる。
但し、現在の中国ではいわゆる「正社員」という概念はなく、実力に応じた「契約社員」というケースがほとんどである。待遇や処遇も実力次第である。

MBA取得者の報酬・処遇や、日本企業の課題について
中国ではMBA取得者は主として在中欧米系企業に勤務を希望するケースが多い。管理職に就くのがほとんどであり、年俸も一般的な管理職の数倍から数10倍の報酬で、日本円換算で100万円から、1000万円を超える者もいる。
残念ながら日系企業の認識が低い。また、日本企業の本社も含め、MBA取得者を採用した場合、経営専門職を含め、これらの人材を使いこなせないケースが多い。
日本の大手企業では現在、1社当たり数百人規模の中国駐在経験者を生み出しながら、本物の「中国経営のプロ」は数少ない。全体から見ても、中国ビジネスはすでに多くの日本企業にとっては「通常業務の一環」になりつつある中でも、専門人材が不足している。
中国やアジアで「勤務を経験した」唯の「サラリーマン」ではなく、問題意識を明確にもち、経営のセンスを持つ者、あるいは中国やアジアビジネスの現場で実体験をしながらも、体系的な、実践的な経営学を学び、その応用能力を持つ「中国・アジアビジネスのプロ」が求められている。そういう意味においても中国MBAは1つのルートとして期待される。

中国MBAの意義と現状の問題点について
中国のMBA教育の歴史は10年しかないが、現在は中国国内で大ブームだけでなく、台湾や香港から、あるいは華人・華僑も毎年、多くの者が中国でこれらのコースに入学する時代になっている。無論、「中国の世紀」や「中国ビジネス」を狙った外国人の希望者も増えている。
(杉田研究室や本ホームページに対する問合せが激増しているのもこれらのことが背景になっていると思われる。)
「MADE IN 中国」のMBAやEMBAは将来性のある、と杉田の担当講義や企業研修では事情の紹介を多く行なっているが、留意すべき点もないわけではない。
中国のMBA教育の内容やレベルにはまだ「発展途上」である。多くの教材は欧米からの「輸入品」である。
また、教員陣は実際の企業勤務や実務経験の不足から編成するケース・スタディの多くも「発展途上」であると言わざるを得ない。
さらに、これらのコースに限らず、残念ながら少なくても現在では中国国内ではまだ「内外格差」が残っており、中国人学生の学費と、台湾や香港・華人華僑学生、そして外国人学生との学費格差が場合によってはかなり大きいものがある。改善されつつあるが、結果的に、中国という「物価の安い国」でのMBAやEMBA留学は、現在では欧米での留学とは学費的には大差はない状況にある。

杉田研究室の取り組みについて
中国MBAは将来性のあるものであり、現段階の学費や内容はともかく、例えば清華大学の正規の試験で入学する学生は中国の超エリートたちであるので、ケース・スタディの議論や共同生活などにより、学費などでは図られない資産を入手できると思う。
杉田研究室・杉田ゼミや杉田担当講義(兼務校含む)では、豊富な企業業務の担当経験からMBA方式のケース・スタディを積極的に導入し、受講者による積極的な講義参加を図っている。また、欧米へは言うまでもないが、中国をはじめ、アジア諸国への留学を積極的に応援している。2001年度と2002年度ではゼミ生によるカナダ留学とフランス留学者(単位互換生)があり、中国に短期留学に出る者も数名に達する。
企業対象では、コンサルティング会社勤務時から中国ビジネスの事例も含め、国際ビジネスのケース・スタディを数多く、MBA方式にて研修を担当してきている。(参考: こちらのリンク へ)
近い将来、受講者による中国でのMBAやEMBAの誕生を期待している。杉田ゼミ生に限らず、甲南大学や兼務校の受講生、企業研修をご利用の方々、並びに本ホームページ閲覧の各位においても、同様に期待している。
但し、言うまでもなく、大切なのは「資格」よりも「中味」である。
本質的に求められているのは、平時の問題意識と、実力を身に着けるための努力と、実際の問題対応能力である。これらは本来、平時における不断な努力によってもある程度補うことができる。
MBAコースやMBA研修はこの個人による努力をさらに促し、補完するための手段の1つである。

前掲各項は、杉田俊明が交流をもつ中国の主要大学の教員より得た情報や、担当業務の状況からまとめた概況である。詳細解説や質疑については杉田担当の各講義、研修を利用されたい。
各大学の詳細状況、諸コースや入学資格、学費などについてはそれぞれの大学のホームページを参照されたい。

その他の中国MBA関連情報は こちらのリンク へ

中国でのMBA研修担当のスライド資料などは こちらのリンク へ (中国語)

MBAケース・スタディ資料などに関しては こちらのリンク へ 


杉田俊明研究室
更新: 2003/03/02
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