甲南大学 ビジネス・イノベーション研究所
海外(北京)セミナーに関する資料案内



テーマ:日中ビジネス連携と日本企業の課題
日時:2005年9月5日(月)14時から17時
会場:中国 北京 王府井 東方広場 東三オフィス棟20階
 大金(中国)投資有限公司 VIP会議室

会議概要
ゲストスピーカー
●松下電工(株)海外事業統括担当常務取締役 田中弘司氏
(前 中国駐在 松下電工中国統括会社総裁・総代表)
我が社中国現地法人グループの戦略と事業再編について」(資料pdf)
●清華大学 企業管理学院 副教授 石永恒氏
中国の識者がみる日系企業の中国現地経営について」(資料pdf)
●中倫金通運律師事務所 パートナー弁護士  呉鵬氏
日中ビジネス、トラブルの現状と対応について」(資料pdf)

出席者一同による質疑応答、会食・懇談会

●司会・コーディネーター:
甲南大学 経営学部 教授 杉田俊明
甲南大学 ビジネス・イノベーション研究所 兼任研究員
中国 中山大学 企業管理研究所 特約教授

北京は中国の政治・経済の中心であり、中国進出日系企業の現地統括本社がもっとも集中している地域でもある。日中経済連携と日本企業の対応について検討する場合、現地における中国側政策制定関係者の意見や、実際に現地で経営している日系企業の経営者とそれらの経営を補佐している専門家の意見に耳を傾けることが重要である。そのために、当所は地域連携や経済連携、あるいは産官学連携を積極的に進め、そして、積極的な国際地域連携も進めていく一環として、このシンポジウムを北京にて開催したのである。

シンポジウムにおいて、日本企業の中国ビジネス担当責任者として最初に登壇した田中氏は、松下電工グループの対中ビジネスの歴史を簡潔に紹介された。当該企業は現在、中国において投資性公司(中国におけるグループの事業統括会社) 1社、統括会社の分支機構7拠点と営業拠点15拠点、製造販売会社16社、販売会社・その他4社、内装会社2社を有し、電子材料、制御機器、住建、電材、電器などの事業を展開している。

中国事業の展開について当該企業は事業部別に当初バラバラに行った対中直接投資に対して本社や統括会社によるガバナンスを強化し、現地統括会社の機構改革や役割改革について再三行い、全社一丸とした対応を強化してきた。このような当該企業の中国ビジネス対応は日系企業の中では相対的に成功しているほうだが、今後の更なる展開のためにとりわけ以下のような課題に目下取り組んでいるという。

●連結経営体制強化による中国事業責任の明確化

これは、製販の連結により、真の事業として収益性の明確化を図ることであり、不採算事業への早期対応も含め、全体の収益体制を強化するものである。また、日本本社の各事業本部に直結する体制を構築し、日本にある経営資源の現地投入を推進し、競争優位の保持による収益の強化を図るものである。

●企画・開発・製造・販売の垂直的連携による市場対応力強化

これは、市場ニーズに対応したスピード重視の新商品開発フローを再構築すると同時に、サプライチェーンマネージメントの強化により、調達と生産管理、在庫、デリバリー体制のネットワーク化を達成し、市場対応力全体の強化を図るものである。

●中国における効率経営の実現

これは、リーガルや知財などコンプライアンス経営の強化、あるいは資金調達やIT投資、グループ内金融など投資の効率化、そしてロジスティクスなどグループ内でのスタッフ機能の重複防止など、統括会社のコーポレート機能の強化により、当該企業グループ全体の効率経営を実現しようとするものである。

田中氏は、在中日系企業の経営上の課題について、特に強く指摘したのは、経営者として駐在している日本人の「企業家精神」である。日本からの指示を待つだけの、受け身的な現地経営では、急ピッチで発展する中国ビジネスには対応できない。もっと責任感を持った、より自主的、積極的、よりスピーディな対応が求められていると指摘された。

中国の学識者として登壇した石氏は、日本企業は中国の経済発展に大きな役割を果たしながら、中国では充分に、また、正しく認識されていない現状をさまざまなアンケートのデータを駆使して説明された。日本企業や日本人によるコミュニケーションの能力や、中国社会や中国の人々への、より積極的なアプローチや、よりオープン、より親密な交流が必要だということを指摘された。

中国の法律専門家として登壇した呉氏は、日中ビジネスの現場におけるトラブル発生の現状について説明された。中国側による法的な未整備や解釈のバラツキ、あるいは経済発展途上において発生するさまざまな、国際的に見ればルールを逸脱するような中国企業の行動により、日系企業を含む在中外資企業との間でさまざまなトラブルが発生している。日本側においても現地事情に対する認識の不足や誤解からトラブルを引き起こすことがあり、今後は中国事情の勉学と同時に、コンプライアンス上の対応、あるいは専門家の一層の活用が課題である、と指摘された。

本シンポジウムには松下グループ、ダイキン工業など日系現地法人の経営者や、わざわざ来られた日本企業の経営者の方々、並びに本学関係者の計約30名が参加され、終了後の懇親会も含め、ゲストスピーカーの発言を中心に活発な議論が展開された。

本シンポジウムのテーマ通り、日中ビジネス連携と日本企業の課題において、今回の会合は主催者や出席者一同にとって、極めて有益なものであった。

なお、本会合の開催に当たり、前掲各ゲストスピーカーや参加者と共に、大金(中国)投資有限公司より多大な支援を得たことについて、この場を借りて深謝申し上げたい。

杉田俊明研究室
2005/11/23
ライン
トップ ページ へ