英語で学ぶ国際ビジネス(その1)

2003年夏期英語専門集中講座(MBA基礎講座)・研究発表資料
ハーバードビジネススクールで使用されている教材を使用した集中講座

内田(第一)チームによる研究発表

Transnational Management(P.2P.119行目・英文内容の和文要約)
      甲南大学経営学部 杉田ゼミ4回 内田雅子 大崎梢 中野慶介 松村友雄
                             
    杉田ゼミ2回 幸田あゆみ 西川展久

多国籍企業の定義

 多国籍企業はただの輸出業だけではなく、外国で「十分な直接投資」を必要とする。そして、海外資産を単に消極的な財産明細書の中にとどめておくよりもむしろ、積極的に海外資産を管理することに従事するべきである。

多国籍企業はとても近代的な事象であり、その歴史は1世紀以内の昔に遡る。実際に多国籍企業のほとんどは第二次世界大戦後の少しの時期に発展した。

 この背景において、過去20年間にわたって国連がどのように多国籍企業の定義を変えてきたかを観察する。1973年に、国連は「資産、工場、鉱山、販売事務所そしてそのような同様の物を、2または2カ国以上の国において統括している企業」と定義した。1984年までに以下のように定義を変えた。

a)法的形態やこの様な実態の活動分野とは関係なく2カ国以上で実態がある企業

b)1つもしくはそれ以上の政策決定機関機関を通して首尾一貫方した方針や共通の戦略を採ることを可能にした政策決定システムの下で経営される企業

c)その実態の関連性が強く、オーナーシップないしは他の方法で企業同士が活動を超えて、重要な影響力を行使する事が出来る企業。とりわけ、知識や資源や責任を他社と共有することが出来る企業。

 

動機付け

伝統的な動機付け

海外で投資する企業を動かした初期の動機付けの中の一つは、必須の供給物(とりわけ、鉱物、エネルギー、そして供給料の少ない材料資源)を手に入れる必要性であった。

もう一つの国際化の強い誘因は、海外市場を求める行動だと評するかもしれない。この動機付けは、彼らの技術あるいはブランド認識に主として関係のあるいくつかの本質的な利点を持ち、海外の市場においていくつかの競争優位を与えた企業にとって特に強い動機付けであった。彼らの初めの姿勢はしばしば日和見主義であったけれども、多くの企業は結局、これらの追加販売が企業に規模と範囲の経済を利用させることを如実に示し、それによって国内の競争相手を超える競争優位の根源を提供する。

もう一つは伝統的で重要な国際化の誘因は、製品の低コスト要因を入手(利用)することを要望するものであった。特に1960年代の関税障壁の緩和のとき、コストを象徴した労働者のいる多くの企業は、彼らの製品が輸入品と比べると競争において不利であるとわかった。これを受けて、衣類、エレクトロニクス、家庭電気器具(家電)、時計の製造と他のこのような産業の多くの企業は製造構成や、もしくは完備した製品ラインのために海外に産地となる場所を設立した。

これら三つの動機は、大多数の多国籍企業の海外発展にとって主となる伝統的な推進力であった。(特にアメリカ合衆国から)企業が前進するため、そして多国籍企業になるために相互に作用するこれらの動機付けという方法はレイモンド・バーノンによって開発された有名なプロダクトサイクル理論に説明されている。

 第二次世界大戦後の企業の世界的な拡大の業績はプロダクトサイクル理論が示すパターンにかなり一致している。戦後10年間の国際化の多くを説明するための有用な方法としてプロダクトサイクル理論を規定するにもかかわらず、1980年代頃にはバーノンが鋭い指摘をしたように弁明の力は衰えはじめた(PLC論と一致しなくなってきた)。

 

国際化のための先行条件

企業が多国籍企業になるのに動機付けだけでは十分ではない。個々の国の市場では、外国企業は、少なくとも最初に地元の競争相手からいくつかの損害を被る。国の文化、産業構造、政府の要求、およびその国で取引するその他の様相に、より精通しているので、国内企業はもともと大きな利点を持っている。多国籍企業が不利な点を克服するためには、専門知識やマーケティング能力のような明確な能力を持たなければ国際環境において成功する見込みはない、ということに注意することが重要である。

多国籍企業は生存のためには三つの条件を満たさなければならない。第一に、いくつかの海外の国(地域)は、企業がそこに投資するために必要な動機付けを提供するためにも、確かな立地特殊優位を示さなければならない。第二に、その企業は海外市場において比較的未知の損失を和らげるための戦略的競争力(コア・コンピタンス)を持たなければならない。第三に、その企業はまた契約やライセンスのような外部市場原理によってよりむしろ、企業内部の戦略的強さをレバレッジすることから、より良い利益を得る為に、いくつかの組織力を持たなければならない。(これらの三つの条件はJ.ダニングの折衷理論によって強調される)

これらの必要条件を理解することはなぜ多国籍企業が存在するのかを説明するというだけではなく、世界的ビジネスの中で競争するために戦力上重要な選択を定義する手助けをするということも重要である。

《まとめ&補足》

・多国籍化(国際化)の伝統的な動機

@     資源指向型(原料・エネルギーなど自国に不足している資源を手に入れる為)
A     市場指向型(特に技術力・ブランド力のある企業が規模や範囲の経済を利用する為)
B     コスト市場型(労働力だけでなく低コストの資源を利用する為)

 

・PLC論

1966年にバーノンが唱えたもので、対外直接投資の立地先を説明している。これによると、新製品導入期において現地市場向け本国内生産からスタートし、本国市場内競争が激化し、現地市場での競合他社が新規参入するようになると、現地への生産シフトが起こり、やがて本国市場が成熟期から衰退期に移行する時点では逆輸入が増え、その原因の一つとして発展途上国への進出が挙げられる。

 

・多国籍企業の生存のためには3つの条件 (J.H.ダニングの折衷理論
@「立地特殊的優位(location-specific advantage)」           全て揃った時に、

A「所有特殊的優(ownership-specific advantage)」          多国籍企業の国際生産が

B「内部化優位(internalization advantage)」           進展する

    

立地特殊的優位・・・生産拠点に想定された市場の持つ特性

所有特殊的優位・・・企業規模、多国籍的な事業経験、差別化製品の開発技術などを反映する。多国籍企業がスキルを保持する限り、経営支配力の強化が効率的とされる。

内部化優位・・・企業特殊的優位を企業組織内部で利用するインセンティブである

《私見》
多国籍企業になるためにモチベーションは必要であるが、それ以上に進出国を分析し、進出国で勝つための戦略を持つことが必要であると思った。今日では多国籍企業の影響力が莫大である。大きな多国籍企業に焦点をあてる傾向があるようなので、このような企業だけ注目するだけでなく、国際的にも力を持ってきている中小の多国籍企業にも注目しなければならないと思った。

 
Key sentence》

Although the product cycle theory provided a useful way to describe much of the internationalization of the postwar decades, by the 1980s its explanatory power was beginning to wane as Professor Vernon was quick to point out.

戦後10年間の国際化の多くを説明するための有用な方法としてプロダクトサイクル理論を規定するにもかかわらず、1980年代頃にはバーノンが鋭い指摘をしたように弁明の力は衰えはじめた(PLC論と一致しなくなってきた)。


前掲内容は受講者による以下の英文文献の和訳要約である。
Christopher A. Bartlett, Sumantra Ghoshal:
Transnational Managemant: Text, Cases, and Readings in Cross-Border Management,
Second Edition
1995, by The McGraw-Hill Companies, Inc


参考:前掲英文書の和訳書として『MBAのグローバル経営』(梅津祐良訳、日本能率協会マネジメントセンター、1998)はあるが、部分訳にすぎない。

なお、今回の集中講座に際しては、事前に前掲英文書の完全書名と、前掲和訳書の存在を出席者には一切伝えていない。
出席者は英文しかない状況の下で、チーム作業による和訳に努め、討議により前掲要約のまとめに努めたものである。
従って、誤訳や正確に理解していない部分(無修正掲載)はあるが、受講者や各チームの努力の結果であり、勉学における中間成果の一環として、ここに掲載し、出席者一同の励ましと同時に、閲覧各位の参考になれれば、と思う。
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杉田俊明研究室
更新: 2003/08/31
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